ルカ 16章
「あなたがたは、人の前で自分を正しいとする者です。しかし、神はあなたがたの心をご存知です。」
(ルカ 16:15)
16章は弟子たちに語られたものですが、不思議な譬えです。不正を訴えられ、主人に報告を求められた管理人が、解雇を見越して、主人の債権を不正に利用して債務者に恩を売り、失業した後、援けてもらおうとしたのを知った主人が、彼の抜け目なさをほめ、不正の富で友をつくっておけ、と語ったという譬えです。おかしいという疑問が湧いてきます。しかし、主がほめられたのは将来を見通してそれに備える目のつけ方で、彼のしたことではありません。ですから、続けて、人は神にも仕え人にも仕えることはできないと語り、イエスさまの話をあざ笑ったパリサイ人に「あなたがたは、人の前で自分を正しいとする者です。しかし、神はあなたがたの心をご存知です。」と語られたのです。イエスさまは、人の世界にではなく神に目を向けるように命じられたのです。そのことをはっきりと示されたのが金持ちとラザロの譬えです。この世では、金持ちはぜいたくに遊び暮らし、ラザロは残飯にでもありつきたいほどの貧しさでした。しかし死後、ラザロは御使いたちによってアブラハムのふところに引き上げられ、アブラハムのふところで安らいでいました。金持ちはハデスで苦しみ、はるかに仰ぎ見て、アブラハムに、ラザロを遣わして援けてくれるように頼みましたが、許されませんでした。人の世界と神の世界とははっきりと分けられていて、通じあうことができないのです。人を相手にするのでなく、神に向かって生きよ、と言われていると受け止めました。
唄野 隆 |